ファストフード業態新動向レポート

今、ファストフードのあり方は大きく変わろうとしています。

中国産鶏肉問題の影響で、今年の国内の洋風ファストフード業態全体の売上は9月に88.3%と昨年を大きく下回りました。一方、和風ファストフードはヘルシーかつ高単価のメニューの導入により客単価を引き上げ、昨年を上回った結果となりました。このことから、一時的なものであるにせよ、ファストフードは価格だけで選択されるという状況が変わるように読み取れます。

米国でもファストフードの消費がかわりつつあります。マクドナルドが2014年第3四半期の決算で、米国内での売り上げ3・3%減が発表されました。 また、かつてマクドナルドと提携した大規模な病院も相次ぎ契約を打ち切り、患者さんへの提供をやめようとしています。一方、メキシコ料理チェーンの「チポトレ・メキシカン・グリル」は今年に入って値上げを実施したにも関わらず、客離れは見られず、四半期決算で25%という大幅な増益を発表しています。そのビジネスモデルとは・・・

実は、チポトレは冷凍食品を使わず、毎日生産者から直接届けられる新鮮な食材を、その場で調理し、提供しています。同社広報は「Chipotle は “Food With Integrity(正直な食べ物)” というビジョンを通して、新鮮なだけでなく -可能であれば- サステナブルに育てられた、そして動物や土地、農家に対する敬意を持って自然に育まれた食材を使った、より良い食べものを追求しています。(Through our vision of Food With Integrity, Chipotle is seeking better food from using ingredients that are not only fresh, but that–where possible–are sustainably grown and naturally raised with respect for the animals, the land, and the farmers who produce the food.)」と発表しています。とても時間と手間を掛かるビジネスモデルですが、同社は元々マクドナルドの子会社で、マクドナルドは2006年に全ての株式を売却しました。同社はこの考え方を貫き、現在グループ全体で1539店舗を展開しています。産直という言葉は最近日本でも流行っていますが、モデルを確立するのは大変で、諦めた会社も多いことでしょう。チポトレの事例が皆さんのご参考になればと思います。


毎日時間を惜しんで働くビジネスマンにとって、確かに早く提供されるファストフードは欠かせないものであることは事実です。昨今、ファストフード業態は顧客のニーズに応え、提供スピードや価格優先で急成長を遂げてきました。しかし、一方では生活習慣病やガン、糖尿病などの発症で食生活改善の意識が消費者の間に浸透し、手軽ながらもヘルシーな食事へのニーズが高まっています。

チポトレは「地球環境を考慮した安全な材料」を「伝統的な料理方法」で提供するという姿勢を貫きその価値を消費者にも理解してもらうことで、新鮮で質の高い商品を速く提供する店として確固たる地位を確立し業績が低迷するファーストフード業界の中で成功を収めることができました。21世紀のファストフード業態は価格競争より、安心・安全な食事を通じお客様の健康を支援する形へ転換するのではないかと思われます。

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http://www.inshoku-navi.com/

画像:Chipotle社HPより。

 

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